ドカ雪が降ったその夜。
私は青空駐車場に止めてある車の雪かきをしようと家を出た。
駐車場にいってみると車は雪ですっぽりと覆われ見えなくなっていた。
やれやれ、と重い足取りで車に近づく。
すると突然
「ワン!ワン!ワン!」
暗がりから犬の鳴き声。
駐車場に隣接している家の庭に一匹の犬がいた。
街路灯の光がここまで届かずどんな犬かはよくわからない。
シルエットから中型犬ということだけがわかる。
時間は午後11時を回っていた。
番犬としては優秀だがこのまま吠え続けられると近所迷惑だ。
しかし明日のことを考えると雪かきしないわけにはいかない。
早く終わらせてしまおう。
そう思いスコップを雪に突き立てたその時だった。
「ワン!ワン!ワン!ワン!」
けたたましい鳴き声とともに犬は庭を飛び出し私に向かって一直線に走ってきた。
ぬぬぬっ!やられる!
そう思ったときにはもう犬は私の横をすり抜け、あっという間に闇の中に消えていった。
その犬は番犬ではなく単なる野良犬だったのだ。
もしあの犬がバイオハザードに出てきた犬だったならば…。
なんでも思い込んで行動してはいけない。
恐ろしくもありイソップ童話的な教訓めいたお話でもある。