整体を行うための基礎知識

 整体を行うには解剖学や生理学、整形外科学、一般臨床学など様々な医学知識があるにこしたことはありませんが、当店では慢性的な肩こり、腰痛を解消するということから、ここではこの肩こり、腰痛を手技療法で治療するために必要な簡単な知識を書いていきます。

骨格筋の機能

 筋肉は骨格筋、心筋、平滑筋の3つの種類に分けられます。このうち当店で治療する筋肉は骨格筋になります。

 

 骨格筋の大部分は関節を曲げたり伸ばしたりするときに働き、随意的に収縮させることができることから随意筋とも呼ばれます。また骨格筋を顕微鏡で見ると、線維に明るい部分と暗い部分とが交互に横に走っているような縞模様が見られることから橫紋筋とも呼ばれます。

 

 筋肉は収縮するという働きはしますが伸張するという働きはしません。例えば肘の関節を曲げるとき、上腕二頭筋という筋肉が収縮しますがこのとき上腕三頭筋という筋肉が伸ばされます。そして肘の関節を伸ばすときには上腕三頭筋が収縮し、上腕二頭筋が伸ばされるのです。このように体を動かした時に収縮する筋肉を主動筋、その収縮する筋肉に相反する動きをする筋肉を拮抗筋と呼びます。

 腰が痛いという患者さんに整体を施す際に問診や徒手検査などを行った結果、痛みの原因が腰側の筋肉ではなく拮抗筋であるお腹側の筋肉に見つかるということはよくあることです。

整体を行うためには骨格筋の解剖学は必須

 骨格筋のそのほとんどは関節をまたいで2つ以上の骨に付着しています。そして大雑把にいうと筋の両端のうち体幹に近い方を起始、体幹から遠い方を停止といいます。腕の筋肉で例えると、肩に近い方が起始で指先に近い方が停止になります。この起始、停止の知識は整体を施す際、とても重要です。

 また筋肉が関節をどのように動かすかということを筋の作用といいますが、この筋の起始、停止と作用はワンセットとして覚えます。

 

 肩に痛みのある患者さんが来店されたとき、患者さんの肩を闇雲に揉んでもあまり高い治療効果は望めないと思います。まず肩を動かしてもらいどのように動かしたときに痛みがあるかを確認します。腕を上げるときに痛いのか、下げるときに痛いのか、外転、内転のときか、外旋、内旋のときか・・・。このとき筋の作用を知っていると、どの筋肉に痛みの原因があるかを予測することができます。そして起始、停止を知っていることで適切な治療範囲を設定することもできるのです。

 またストレッチを行う際にも筋の起始、停止と作用を知っていることで効率的なストレッチを行うことができます。

深部反射と反射の協調

 皮膚、筋肉、腱などに与えられた刺激に対して、無意識に起こる不随意的な運動を反射と呼びます。

 外部からの刺激が伝わって筋肉の運動までにいたるルートを反射弓といい、ここに大脳皮質は関与していません。よって反射は意識しないままで外部の刺激に反応します。

 

 腱や骨に刺激を与えたときに起きる筋肉の収縮をみる検査では深部反射(腱反射)が用いられます。深部反射は反射弓のいずれかの部位で障害があると、減弱もしくは消失します。

 また深部反射は大脳皮質運動領と錐体路にある上位運動ニューロンによって抑制されています。このため上位運動ニューロンに障害が起きると抑制が解除されて深部反射が亢進します。

 よって反射が消失しているか、亢進しているかを確かめることによって上位、下位どちらに障害が起きているかを判断することができます。

 

 代表的な深部反射としては

 ・下顎反射 ・上腕二頭筋反射 ・上腕三頭筋反射 ・橈骨反射

 ・回内筋反射 ・膝蓋腱反射 ・アキレス腱反射

などが挙げられます。

 

 主動筋が収縮しようとするとき拮抗筋が弛緩しなければ関節を動かすことができず運動を行うことができません。しかしこのようなことが起こらないよう、脊髄内には主動筋が収縮中は拮抗筋を支配する運動ニューロンの興奮を抑制する回路があります。これを相反神経支配の機構と呼びます。

 また筋肉はしっかりと収縮したあと自然に緩むという性質があります。この性質を利用し拘縮した筋肉を緩ませる方法をファシリテーションテクニックといいます。

 整体ではこの相反神経支配とファシリテーションテクニックを応用し肩こりや腰痛の治療を行うことがよくあります。